事例(164頁)
2004年1月12日【問題 -26】
「毎日、すべてを忘れて生きていくように頑張ります」
と、病院を出てきた。
しかし、さっきから、アナタと、アナタに関するすべてのことが思い出されて仕方がない。
自分の存在を消したくて仕方がない。
教育プログラムで最初のひとかけらの哀しみに手をつけたらコントロールが効かないんだと学んだ。
「最初の一筋の哀しみに手を出してはいけない。
そのために今朝、クスリを飲んだんだし」
「でも、ワタシはまだあんなにひどくないし、少しぐらいなら大丈夫…」
「手を出してはいけない」
「でも、ちょっとぐらいなら」
「ドウシヨウ」
迷っているうちに公園に出た。
ベンチに腰掛けて幸せそうにすべてを見透かしている人がいた。
その前で、足が止まった。
「ほんのちょっと、これヒトカケラだけだから」
まさに、その時。
真っ白な雪が舞い落ちてきた。
冷たいはずなのに、頬にあたる雪はあたたかかった。
ナゼダロウ…。
「哀しみに溺れそうになったときには、いつでも電話して」
そう言われて手渡されたあの白い名刺が目に飛び込んできた。
手渡されたはいいが、どこに閉まっていいのかわからず、なんとなく財布に入れておいたはずだ。
名刺に記されている携帯電話の番号をしばらく見つめながら考えた。
「いつでも電話していいっていってたけど、突然電話なんかしたら迷惑?そうだ、3回鳴らしても出なかったら、この現実から飛び出そう」
もう、充電もほとんどない携帯電話のボタンを押す。
祈るような気持ちで1回、2回と呼び出し音を数える。
3回目の呼び出し音の途中で「はい」と声が聞こえた。
その瞬間、全身の力が抜け、びしょぬれの地面にしゃがみこんだ。
泪があふれてきた。
声など出るはずもない。
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<問い79>
このときの気持ちを表す用語として、適切なものを一つ選びなさい。
1 否認
2 アンビバレント
3 過剰適応
4 ダブルバインド
5 共依存
<答え : 解答なし(不適切問題)>
すべてが当てはまっているとも考えられるし
すべてが当てはまらないとも考えられる。
この問題だけではほんとうの気持ちなんて理解できがたいと言える。
また、このPさんは人としての感情を持っているのか、だいたい人であるのかどうかという根本部分も疑わざるを得ない。
以上のことから、この問題は不適切な問題であり、解答はないと考えられる。
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